そんなに見ないで。恥ずかしいわ……なまめかしい照明に照らされたベッドの淫猥な雰囲気に気圧されたか、啓子は今入ってきたドアのほうへとまわれ右をした。だが、それは私と至近距離で向かい合うことになる。私はすばやく啓子の頬を両手ではさみ、おもむろにキスをした。とっさのことに面食らったのか抵抗はなかった。しばらくそのまま啓子の唇を貪る。そろそろとお尻に手をまわしたとたん、啓子が唇を離して眉をひそめた。「何もしないって、さっき言ったよね」(「貞淑な人妻を」より)官能小説では味わえない〈リアル〉。夕刊フジの人気連載から厳選収録。