「抱かせてあげるから、言わないでよ」同じ文芸サークルの杉木にそう告げる美衣。先週、ラブホテルから教授と一緒に出てくるところを、杉木に目撃されてしまった。教授は文芸サークルの顧問で、一人ぼっちで性格の悪そうな美衣を「文芸サークルに入らないか」と声をかけてくれた人。そんなふうに見てくれることが嬉しく、何度かデートを重ね、身体の関係を結んだ。そんな矢先のことだった。「抱かないよ。あんたのことなんか」そう言い放つ杉木の目は、刺しつけるように冷たい。「でも、本当は、初めておまえを見た瞬間から……──」ドサリ。気がつけば美衣は天井を仰ぎ、床で組み敷かれていた。