薔薇、お茶、リボン、焼き菓子……。完璧な幸福の中にひそむ死、誘拐、心変わりや別離。――外から来た少女は、世界の裂け目を覗き込む。ニュージーランドに生まれたマンスフィールドは、ヨーロッパに暮らす人々の優雅な幸福を活写する。同時に日常の翳に見え隠れする、死、階級差、裏切り、別離なども、彼女の眼は射抜いていく。小さなお菓子のような短篇には、毒や皮肉も混ざっていて、人間社会の普遍を描く。ヴァージニア・ウルフのよきライバルで、短篇の革新者。マンスフィールドの比類なきコレクション。--------------------------------------【目次】■風が吹く……The Wind Blows■ガーデンパーティー……The Garden Party■少女……The Young Girl■幸福……Bliss■見知らぬ人……The Stranger■パール・ボタンはどんなふうにさらわれたか……How Pearl Button Was Kidnapped■ミス・ブリル……Miss Brill■ある上流婦人のメイド……The Lady’s Maid■父親と娘たち……Father and the Girls ■郊外のフェアリーテール……A Suburban Fairy Tale■一杯のお茶……A Cup of Tea■人形の家……The Doll’s House■風味のピクルス……A Dill Pickle■船の旅……The Voyage■入江にて……At the Bay■解説 キャサリン・マンスフィールドという事象――西崎憲