慣例的に連続して上演されることの多い、ヴェリズモ・オペラの代表作2曲を収録。ヴェリズモオペラとは1890年代から20世紀初頭にかけて流行したイタリア・オペラの新傾向で、同時代のヴェリズモ文学に影響を受け、一般大衆を主人公に日常生活や事件などを題材に、より生活に密着させようと試みた作品群。本書の特筆すべき点は、イタリア、ソンゾーニョ社の初版台本にもとづく、日本初の対訳であるということ。韻律に則った厳密な定型詩でできているこの2曲を、確かな出典によって整理し、形にしたはじめての対訳であり、同曲の今後の上演、研究の起点となるであろう。これまでの本ライブラリー同様、「日本語の分かりやすさを犠牲にしても、原文に何も加えず、引かず、原文の各行ごとにそれに対応する日本語をおくというまったくの逐語訳」(訳者)を徹底し、イタリア語とオペラに精通した訳者ならではの、細部にまで目の行き届いた信頼感ある翻訳がなされている。全編に付された克明な註も、あらゆるオペラ・ファンのニーズに応える詳しい内容となっていて、イタリア語の教科書としても有用。もちろん本ライブラリーの特徴である「イタリア語と日本語訳が同時に目に入ってくる」ブロック組版も大変好評。