昼の光の届かない深みに広がる「魂の風景」同人誌に批評を発表するのみで著作を遺さなかった越知保夫(一九一一~一九六一)は遺稿集『好色と花』により、遠藤周作、島尾敏雄、平野謙らに絶賛され脚光を浴びた。理性の光を超えて実在の風景へと手を伸ばした彼の精神の軌跡を若松英輔が縦横に論じた傑作批評に、新原稿を加えて編む決定版。人間と「死者」との交わりを探究したその精神の軌跡を、小林秀雄、井筒俊彦、須賀敦子、池田晶子、そしてキリスト教との連なりの中に描き出す日本精神史の試み。【目次】■はしがき■信仰の実践と逮捕まで■詩と愛■批評家の誕生■聖者論――越知保夫と小林秀雄■実在論――越知保夫と井筒俊彦■死者論――越知保夫と二人の劇作家、チェーホフとマルセル■異端論――越知保夫と須賀敦子■あとがき〈増補〉■遅れてきた遺言■驢馬の仕事■悲しみの神学――近代日本カトリック感情史序説■増補新版 あとがき