《「選ばれる学校」、「選ばれない学校」の分断を乗り越えるために》「学校選択の自由と多様化」を名目にすすむ公立校の統廃合。そして、社会的・経済的に「学びの機会」に恵まれない子どもたち――。《教育は、だれのものなのか》機会均等により学力向上を追求した戦後の「メリトクラシー」から親の経済力と価値観が子どもの学力を決める「ペアレントクラシ―」へ。学区制廃止、中高一貫校の導入などで広がる学校の二極化と学力格差……。《「公正」の原理こそが、公立学校を蘇生させる》PISA(OECD生徒の学習到達度調査)で上位成績を収める国々は、いずれも学力格差を縮める施策を採っている。しかし、日本では格差是正の動きはほとんど見られない。「成果主義」「競争主義」を掲げる方向性が変わらなければ、教育現場での努力にもおのずと限界がある。「卓越性を求める教育」から「格差をなくす教育」へと舵を切るために、今できることとは何か?公教育のより良い未来のために新たな道をさぐる提言の書【目次】■ まえがき〈Ⅰ部〉1章 メリトクラシーからペアレントクラシーへ 1 大きな歴史の流れの中で 2 学校の二極化とは何か? 3 学校教育は公共財か、私的財か 4 公正と卓越性――関係性の変容2章 新自由主義的教育改革とは何なのか? 1 そもそも新自由主義とは 2 新自由主義的教育改革の典型例――サッチャー教育改革について 3 日本への導入 4 新自由主義をめぐるせめぎあい〈Ⅱ部〉3章 お受験狂想曲――卓越性をめぐる親子ぐるみのたたかい 1 はじめに 2 「教育を選ぶ」人とはだれか 3 中学受験 4 習い事 5 「お受験」の現状 6 「お受験」を支える人々4章 学校選択制のいま 1 イギリスの教育は動いていた! 2 日本の学校選択制の草分け――品川区の事例 3 学校選択制の盛衰 4 遅れてきた大阪市?! 5 考察――根づかなかった学校選択5章 小中学生の学力格差――学校間格差の顕在化 1 「学力の二極化」から「学校の二極化」へ 2 「2こぶラクダ」化の克服――「効果のある学校」の存在 3 国際学力データによる学校間格差の検討 4 学力向上策との関係性――茨木市の事例から 5 学校選択との関係性――大阪市の事例から6章 高校の学区制――高校教育の変動の視点から 1 戦後高校教育の発足――高校三原則 2 学区制の歴史的変遷の全体像 3 高校教育の展開のなかで――1950年代から90年代まで 4 21世紀に入ってからの大きな変化 5 まとめ――本音が理念を上回る7章 高校教育の現在――卓越性と公正のはざまで 1 私学優勢――高校における卓越性 2 高校の階層構造――ローレンの研究から 3 生徒文化はどう変わったか 4 高校教育の「多様化」――政策の流れ 5 卓越性と公正のバランス――大阪府の事例から8章 多様化か、複線化か――学校体系のゆくえ 1 複線型学校体系と単線型学校体系 2 高等専門学校――中級技術者を育成する 3 中等教育学校――公立部門の復権を目指して 4 義務教育学校――卓越性と統廃合ニーズ 5 学校体系は複線化したのか〈Ⅲ部〉9章 より公正な教育を求めて――学力格差を撃つ 1 はじめに 2 海外ではどうなっているか 3 日本ではどうなっているか 4 まとめ10章 公教育のこれから――アミタリアンをつくる 1 教育機会確保法の時代 2 「しんどい層にとっての学校」からの展開 3 公教育の理念を考える 4 やわらかい学校システムをつくる 5 おわりに■ 参考文献■ あとがき