息苦しいこの世界からの出口は、ある。片づけコンサルタント「こんまり」のメソッドは、自分とモノとの純粋な対話ではなく、自分自身との対話を目指すものなのではないか。アニミズムとは、地球や宇宙における存在者のうち、人間だけが必ずしも主人なのではないという考え方だとすれば、自分との対話を目指すのは、人間のことだけしか考えていないという意味で、真のアニミズムとは呼べないのではないか。本書の出発点は、ここにある。アニミズムは「原初の人間の心性」として過去のものとされてきた。しかし、そこには、人間の精神を豊かにするヒントが隠されているのではないか。文学、哲学の大胆な解釈とフィールド経験を縦横に織り合わせて、「人間的なるもの」の外へと通じるアニミズムの沃野を探検する。人間が世界の「主人」をやめた時、動物、モノ、死者との対話がはじまる。 【目次】1 こんまりは、片づけの谷のナウシカなのか?2 風の谷のアニミズム3 川上弘美と〈メビウスの帯〉4 壁と連絡通路——アニミズムをめぐる二つの態度5 往って還ってこい、生きものたちよ6 東洋的な見方からアニミズムを考える7 宮沢賢治を真剣に受け取る8 まどろむカミの夢——ユングからアニミズムへ9 純粋記憶と死者の魂——ベルクソンとアニミズム10 記号論アニミズム——エドゥアルド・コーンの思考の森へ11 人間であるのことの最果て——語りえぬものの純粋経験12 人間にだけ閉じた世界にアニミズムはないあとがき参考文献