COOLPIX P1000 は、2018年9月に株式会社ニコン(以下、ニコン)から発売された高倍率ズームのデジタルカメラです。製品の性格としてはCOOLPIX P900 の後継機種、違いは望遠側の画角がCOOLPIX P900 が2000mm 相当なのに対してCOOLPIX P1000 は3000mm 相当まで伸びただけ、という見方ができないこともないのですが、私のような天体写真大好きの写真ファンから見ると、3000mm 相当という超望遠画角の魅力もさることながら、RAW 形式の記録が可能になり、4K の動画が撮影できるようになった、さらにマニュアルフォーカスの操作性が格段に向上したとなると、まるで別のカメラとして登場したかのような印象を持ってしまいます。 COOLPIX P900 が、月や惑星などの天体撮影に超強いというのは今でも変わりがない事実ですし、COOLPIX P1000 になってさらに強力になったというのも事実なのですが、パーソナルコンピューター(以下PC)で画像処理ソフトウェア(以下ソフト)を用いて適切な処理をすれば、COOLPIX P1000 でははるかに高画質の画像を得ることができるようになったことを見逃す訳には行きません。COOLPIX P900 が、記録した画像がそのまますぐに使えるという意味の、いわゆる「撮って出し」のカメラとして一世を風靡し、今でもその価値は下がってはいませんが、COOLPIX P1000 はそれに加え、撮影で得られる画像を素材としてPC のソフトを使いこなすスキルがあれば、さらに高画質の画像を得ることができる新たな可能性を示してくれたのです。 ただし、世の中にあるさまざまなソフトを使い分け、かつスキルが要求される世界というのはなかなか紹介しづらい情報です。そこで本書は、COOLPIX P900 向けに執筆した『驚異! デジカメだけで月面や土星の輪が撮れる』の内容をCOOLPIX P1000 向けにアップデートした上で、COOLPIX P1000ならではの魅力に注目して、ポテンシャルを最大限発揮するための筆者の取り組み事例をできるだけ盛り込みたいと考えています。 COOLPIX P900 やP1000 が得意な月や惑星などの明るくて小さい天体は、都会の自宅からでも撮影できます。ふだんの生活の中で天体写真を撮影する楽しみ方を、より多くの方にお伝えできれば幸いです。(「はじめに」より)