三田に直心影流の剣術道場を構える峡竜蔵と、団野源之進との仕合日が近づいてきた。誰もが認める一流の剣士・源之進との打ち合いを誇りに思う竜蔵。しかし、仕合をもって直心影流の次期継承者が決まることを知り、大役を背負うことへの重圧ものしかかっていた。そんなある日、大師範・赤石郡司兵衛の紹介のもと、直心影流と縁が深い土岐家での演武披露のため上州・沼田へ旅に出た竜蔵は、そこで思わぬ襲撃に遭う。かつてこの地で名を馳せた亡き父・虎蔵に年来の恨みを持つ者が待ち構えていたのだった……。父の生きざまを胸に、真の“剣?の人”を追い求めつづける若き剣術師範を描く、大好評シリーズ第十弾。(解説・縄田一男)