19歳で結婚して10年間を日々の生活に追われるように必死に過ごしてきた貴子は、ある日、テレビで橋田牧子の姿を見る。牧子は、貴子の夫・勇二の元恋人で、周りからは結婚するかもと言われていた仲だった。勇二が肩を壊し、野球を諦めなければならず、それとともに牧子との関係が終わった後、貴子はそんな勇二と共に人生を歩む決意を固める。来月30歳を迎える貴子は、ふと「あの日、牧子と勇二が別れなければ……。あのとき妊娠しなければ……」と思うのだが……。表題作「三十路まえのアリス」のほか、「でびゅー!」、「スペシャルデー」「立花センセの適齢期」の4編を収録。「この短編集に収録した作品すべてに通じているのは、“自分で選ぶ”ということです。『三十路まえのアリス』を描いた頃は、思いがけないことが立て続けに起きていた頃だったと思います。そんなときに、自問自答した答えを描いたような気がします」(福田素子)