川越の町で遊女となっていた志乃と再会した鉄は、楼主と懸け合い彼女を解放する。鉄の行脚の邪魔になるからと去った志乃に、幸せな結婚を祈る鉄。そして行脚を続ける鉄は、加茂峠の峻険な山道が多くの死者を出していることを知り、固い岩山にトンネルを掘り始めた。たった一人で硬い岩盤を掘り進めて行く鉄の元に、鉄のために両親を失い、幼い頃から艱難辛苦を重ねてきた座波新太郎が、復讐に燃えて現れる。そして学問を重ね自立した志乃が…。復讐を諦める新太郎。遂に叶わなかった恋に殉じた志乃。恩讐の彼方に、鉄は何を見たのか?即身成仏を遂げた鉄の懐には、志乃の櫛が抱かれていた…。