最大の問題作!
商業誌仕事の傍らコツコツ描き続け完成まで十年を費やしと言う。
たかだか32枚の作品であるがその描き込みは凄まじい!
技術も更にアップしている。点描はエロチックな夢の世界を脱却して在らぬ世界の生き物として"存在"している。
副題≪蒼い蝙蝠の顛末記≫とあるように化け物は恐れられる。
ダヴィンチ描くところのマドンナをモデルにした人物が素晴らしい。
彼は男でもなければ女でもない存在として獣欲的、快楽的、神秘的異教徒とさえ見える。
山の岩よりも年を経た存在で吸血鬼のように何度も墓に眠っては又、蒼い月の下に現れる蝙蝠なのである。
無~有~無、人は変遷を繰り返す。
故にどちらでも無いものは夢幻と成って彷徨う。
形は無いが存在し、現象として消え失せる…ここに浮かび上がるのが音楽である。
本書はCDブックとして出版され裏表紙は「Onna」(オンナ)となっている。Onnaとは宮西のバンド名である。Onnaは83年にEPをリリースし二年足らずで活動停止する。CDにはEPの二曲に未発表を加えた三曲が収録されている(電子書籍には音源未収録)。
テクニックの頂点を極めたかにみえた作者が次に送り出したのがこの『マイラ』だ。
恐るべき点と線は、命有るもののように増殖進化している。
ここに"美し過ぎる化物"は誕生した!