父親が残した探偵事務所は、雅が幼いころ住んでいたアパートの一室。たくさんの思い出が詰まった場所だった。新しい人生を探偵として歩き始めた雅は、慣れない仕事に苦労の連続だ。様々な依頼や事件にかかわりながら、やがて雅は自分の小ささ、拙さを知る。妻はなぜ突然、別れを告げたのか、息子はなぜ離れていったのか――。かつての自分と真摯に向き合いはじめた雅。同じころ、空き部屋の増え始めたアパートに土地買収の話が持ち上がり、第2の人生にも暗雲が立ち込めるのだった……。 ※扶桑社より刊行された文庫を再編集したものです。