京都・清水寺の参道にある小さな茶店。そこで、ほっこりお茶を飲んで休憩しているのは、有名な茶道具屋の二代目若旦那。茶道具の鑑定では右に出る者のない、超一流の目利きとして一目置かれている。そんな二代目が茶を飲みながら、なにやら興味深そうに茶碗を眺めていた。中を覗き込み、陽にすかした挙句、「はてな?」と首をひねって帰っていった。その様子を見ていた油売りの庄吉は、二代目が興味をもった茶碗なら、きっと値打ちのある茶碗に違いないと、全財産をはたいて茶店の主人から茶碗を買い取り、意気揚々と二代目の店へ持ち込んだ……。毒舌若旦那と単細胞の庄吉の、茶碗をめぐるひと騒動。劇作家・わかぎゑふによる一席をどうぞお楽しみください。