｢残酷な神が支配する｣のレビュー・感想

この世で一番恐ろしいものは「人間」ではないでしょうか。
しかも、弱い立場である相手だと分かって非道行為を行う人間。 この作品では、それが主人公の継父。彼は、周りにバレないよう主人公だけに性的欲求を一方的に押し付けているのです。
ゲスにも程がある行動に嫌悪感しか感じませんが、主人公は精神的に弱い母を守るために仕方なく受け入れてしまいます。 それが地獄の入り口だとも知らずに。 でも、ただの悲劇にしないのが萩尾先生。この物語には、いくつもの衝撃的展開がまっているのです。

母と二人でささやかながらも幸せな生活を送っていたジェルミ。
しかし母の再婚をきっかけに、地獄のような日々が始まる……。
性的虐待、ドラック、トラウマなどに自己を破壊されながらも、再生へと向かう物語。
重いテーマが次々と描かれるため、かなり話の密度が濃く、読み応え十分です。
時間のある時にゆっくり読んで、その世界にどっぷり浸かるのがおすすめです。