｢夏雪ランデブー｣のレビュー・感想

花屋の店長に一目ぼれした男の子が主人公。店長は恋愛にまったく興味が無さそうなのに男と同棲していることが発覚し、主人公はショックを受ける。けれど実はその男は3年前に病死した店長の元夫で…。
好きな人との別れや、恋する切なさがじわじわと伝わってくる作品です。一途に片思いをしている主人公がとにかく可愛いので、可愛い男性が主人公のマンガを読みたい、という方にもおすすめです。

このマンガの第一印象は、圧倒的な画力に尽きます。画面いっぱいに描かれた花の絵と、その中に埋もれるイケメンが何の違和感もなく一緒に描かれていて、生命力に溢れています。
でも、内容だってその絵の見た目に引けをとりません！若くして未亡人となった花屋の女主人に、彼女より8才も若い男が一目惚れします。けれど悪性腫瘍で病死したその未亡人の夫は、亡霊として現生に身を潜めていて2人を阻止しようと画策します。
同じ時代に生まれて生きて、恋をする権利があるって、それだけで素晴らしいのかも？そんな風に思わせてくれる作品です。

最愛の人を残して亡くなったら、どんな気持ちで相手を見守るのか？そんな世界を描く本作。
幽霊になった夫・島尾と残された奥さんの六花、六花に恋したバイトの葉月くんの三角関係。島尾さんいい人なんですが、六花に幸せになって欲しいけれど、誰にも渡したくない…そんな葛藤の描き方が秀逸！
泣けるというレビューをよく見ますが、人によって泣きどころが異なっている気がします。
カラーページや表紙が美麗で、そこもオススメですよ！

若い青年と花屋の女主人、そして、死んでしまった女主人の旦那さんの幽霊。
全員の心の揺れ動きに、揺さぶられすぎてしまうのですが、中でも死んでしまった旦那さんの幽霊はまだ女主人さんの事が大好きで、主人公と女主人の恋模様を邪魔していきます。
文章にするだけでも辛い。大好きな人に触れることすらできない。。身体のコミュニケーションが無くても、一途に思い続ける描写に切ないと同時に、清らかな気持ちになれます。

ライバルが幽霊の三角関係ってどうなの……？　と思いましたが、それぞれの気持ちや立場を思っているうちに、だんだん泣けてしまいました。
私は特に元旦那（幽霊）が好きです。亡くなっても妻のそばから離れられず、妻の幸せを願いつつも触れることもできず……。しかも目の前でほかの男性にとられそうになっている！　なんて、拷問に近いです。ああ、私が成仏させてあげたい。