｢旅する缶コーヒー｣のレビュー・感想

アラサー女子の心情を描いたら天下一品のマキヒロチ先生の作品です。
本作は、缶コーヒーにまつわるエピソードを詰め込んだオムニバス作品で、親子関係、恋愛関係、友情など様々なドラマを、缶コーヒーを絡めながら描いています。
缶コーヒーという、ドラマ性の無さそうな飲み物が先生の手にかかればこんなにドラマチックになってしまうんですね。
日常の中にも、実は自分が気が付いていないだけでドラマが潜んでいるのかも。

現実の働くアラサー女子には、アラブの石油王と結婚して大金持ちになったり、年下イケメンに熱烈に惚れられて…なんて奇跡はめったに起こりません。
でも、気がつかないところで、誰かがあなたの靴を可愛いな、と思ってくれているかもしれない。誰かが、あなたの仕事でのがんばりぶりを密かに尊敬してくれているかもしれない。
そんな日常に潜むリアルな温かさや視線を丁寧に描いた作品です。

缶コーヒーって、どの場所でもすぐ手に入るもの。誰の生活にも溶け込むことが出来るアイテム。
それを手にした人には、十人十色のドラマがあって、今日もまた更新されていくのです。
本作はその缶コーヒーをテーマに、胸にほっと沁みる人間ドラマが描かれているのですが、まさにこのマンガ自体が缶コーヒーのような癒し系。
時にはビターな味わい、時には甘いひとときを味わえますよ。