最初から最後までツッコミどころが多すぎ。
祇園という舞台、舞妓、芸妓という姿はイメージにあっても一般の人にはほとんど内実が知られていないのをいいことに、いい加減で適当なことばかり書いている。それは仕方ないにしても人間描写も相変わらず貧相で、想像力が乏しい。この作者は嫉妬や権勢欲の感情と足の引っ張り合いと庇い合いの行動しか知らない。人物たちの軽薄で浅薄な思考は、セリフや独白で説明しようとするがことごとく説得力がないこじつけに白ける。これは京都の祇園の話では全くない。祇園の人間ならまず言わない、しない、考えないような言葉や行動を置屋や茶屋、芸妓舞妓にさせている。祇園と銀座を混同している。他の作品もそうだが、「処女は高く売れる」は原作者の価値観でしかない。明日香の独白に「セックスは武器、処女は高く売れる」と出てくるのは典型的な勘違い、芸妓、舞妓は性を売る仕事ではない。現職に失礼である。客と旦那の区別もついていないし、女性であっても紹介なしに勝手に舞妓に会いにくるというのも現実なら門前払い。部分的に参考資料を記しているが、そのせいでむしろリアルな祇園と勘違いさせてしまうのは罪深いかと思う。
筋立ても「女帝」とほぼ同じで、場所が祇園になっただけ。登場人物は政治家と暴力団とせいぜい芸能人、歌舞伎役者を入れて上方の雰囲気をなんとかだしているが、ワンパターンの陰謀スキャンダルも相変わらずの貧相な展開。女性の性や心理のついてはAVレヴェルの妄想に凝り固まっていて、サービスのシャワーシーンで延々と続く独白と濡場はことに噴飯物。全編通して強引なストーリー展開と都合良くできすぎのドラマっぽいタイミングは女帝と同じ。芸妓がおそらく初めて握った拳銃で一発で至近距離でもないのに標的の急所を狙えるのも、この漫画ならでは。
芸妓は魅力的な材題なのに残念な作品。