新人作家さんからベテランさんまで!2017年「女子マンガ」ベスト5

悪魔を憐れむ歌
LIMBO THE KING
エマは星の夢を見る

この季節はランキングものが花盛りですが、不思議と「今年はイマイチだったなあ」という年はなく、「今年は本当におもしろいマンガがたくさんあったなあ」と毎年思っているような気がします。

悪魔を憐れむ歌梶本レイカ

文句なしにいまいちばん続きが気になるマンガ。
8年前に起こった「箱折連続殺人事件」を巡る刑事・阿久津と医師・四鐘のクライムサスペンスです。

個性豊かなキャラクターたち、警察内での陰謀、ユーゴスラビア紛争……複雑に絡み合う要素たちがスケール感ある物語を紡ぎ出します。
作者の梶本先生はBL出身。代表作である『高3限定』や『コオリオニ』もジャンルを超えて高い評価を得ています。
よろしければこちらもぜひ。

LIMBO THE KING田中相

かつて少女マンガはアメリカに恋をしていました。
吉田秋生先生の『カリフォルニア物語』や『BANANA FISH』、成田美奈子先生の『エイリアン通り』や『サイファ』……。
本作は久々にその頃の少女マンガのにおいを感じさせる作品です。
2086年のサンフランシスコ。多くの犠牲者を出した「眠り病」の撲滅から8年。重傷を負って退役の危機にあったアダムにある特殊任務が伝えられます。それは伝説の元英雄と組み、再発した眠り病に挑むことでした。

あの頃のマンガが好きな人は必読、そうでなくともスリリングな物語は一読の価値ありです。

エマは星の夢を見る高浜寛

正直なところ素人レシピやB級グルメガイドでお茶を濁す自称「グルメマンガ」にうんざりしておりました。そこに現れたのがミシュランの調査員を主人公にした本作。
フランスとも関係が深い高浜先生だけに現地の空気感やリアリティは格別です。
フード表現に関してもミシュラン調査員の目を通して描写される料理たちはどれも抜群においしそうで、そう簡単には真似できないクオリティに仕上がっております。
今年はさもえど太郎先生の『Artiste』(新潮社)という素晴らしい作品もありまして(フレンチの天才料理人のお話です)、立て続けに本格的なグルメマンガが登場した記念碑的な1年になりました。

ヒャッケンマワリ竹田昼

最後はちょっと毛色の異なる作品を。ひたすらに作家・内田百閒先生のことを描いた異色作『ヒャッケンマワリ』です。
作者の百閒先生に対する愛が爆発しております。
この作品、8年にもわたって連載されて、今年の夏にやっと1冊にまとまったんですよね。
私も雲田はるこ先生がツイートなさっていたのを拝見して、その存在を知りました。
派手さはありませんが、枕元において、毎晩2~3話ずつ読み進めていくと、とても幸せな気持ちになれるような本です。

にれこスケッチ鴨居まさね

独特のマニアックな世界観が人気の鴨居まさね先生。
今作で描くのはブラシ職人の世界です。
一応は主人公・にれこの恋とお仕事の物語なのですが、恋の相手はすでに結婚していますし、いま流行りの不倫に発展する気配もなく、ブラシ作りのディテールがやけにおもしろく、さらっと登場する餃子もとてもおいしそうで、ついつい何度も読み返してしまうのでした。
男性読者にもオススメ!