物語の世界にすっと入りこめて疑似体験しやすいのがマンガの醍醐味。私がマンガを読む時に求めるのは、
新たな発見やリアリティのある心理描写です。
今年読んだ中で、思わずうなってしまったマンガベスト5を紹介します。
「自分の家を持つ」。主人公の沼越幸は、その目標のために地道に働きお金を貯めて、マンションの説明会に足を運びます。
職場の仲間との飲み会にも参加せず、服装はパーカーにジーンズ姿がほとんど。幸の生き方は楽しみのないようにも見えますが、自分の人生と真摯に向き合っているともいえるのではないでしょうか。
「家を買うのに、自分以外の誰の心もいらないんですから」という幸の言葉が、胸を打ちます。
職場でもプライベートでも空気を読み、自分の意見を押し殺して過ごす凪。人の嫌がる仕事を笑顔で引き受ける凪に、職場の女性たちが浴びせるのはアドバイスと称した容赦ない攻撃です。
ある出来事を機に、会社を辞めて周りの人間との一切の連絡を絶ち、身一つでアパート暮らしをスタートさせるのですが……。
日々のモヤモヤをごまかしながら暮らしている人に読んでほしい作品です。
自分を「取り分の少ない」側の人間と認識し、平凡に暮らす高校教師の美鈴。親友・美奈子の婚約者の早藤との出会いによって一転する。
男性によって損なわれた美鈴たちが抱える、女性であることの理不尽さや無力感、怒り……。目を背けたくなるほど痛々しいと感じるのは、彼女たちに共感しているからなのかもしれません。
ある日、突然赤ちゃんになってしまった47歳の武田本部長。おすわりはできるけど、歩くことも自分で排泄することもできません。部下たちが戸惑いながらも愛情たっぷりにお世話する様子は微笑ましいです。
同性婚や男性の育児参加、働き方など社会的なテーマに触れながらも説教くさくならない、絶妙な温度感です。