熱くて厳しい職人の世界をのぞいてみませんか?5つの人情噺

ましろのおと
昭和元禄落語心中
王様の仕立て屋~サルトリア・ナポレターナ~

最近は、仕事帰りに通える趣味やDIYの体験講座などもよくみかけます。職人として生きる人生を選択することはなかなかできないものですが、それでも決意し、覚悟を持って仕事に向きあう職人たちの情熱や、人間ドラマが目白押しの5作を紹介します。

ましろのおと羅川真里茂

三味線なんて古臭い!もしそう思っていたら、このマンガに震撼すること間違いナシ。雪の降る音や人の足音はもちろん、三味線の音色と張り詰めた空気を、文字なのにそのまま感じられるすごいマンガです。
青森から、背中の津軽三味線を頼りに上京した16才の澤村雪の目的は、「自分の音」を探すこと。一流の才能と技術を亡き祖父から受け継いでいながらも、その力をコントロールできずに葛藤する姿を見て、あなたは一体何を学ぶでしょう?
命をかけて芸を磨く、そしてふと肩の力を抜いて過ごす大切さを、知ることが出来るかもしれません。

昭和元禄落語心中雲田はるこ

もし、落語に敷居の高さを感じて足踏みしていても、読むと心の距離がグッと近づける一冊です。
作中では、戦前から戦後、そして21世紀に向けて後進を育て、落語界の冬の時代に一人花を咲かせ続けた架空の落語家・有楽亭八雲の一生を描いています。
登場キャラが様々な演目を実演紹介してくれるだけでも素晴らしいですが、歯に衣着せない物言いでも、品性溢れる八雲の言葉遣いや、クールで美しい身のこなしも一読の価値アリ。
彼を慕って集まる仲間たちとの、本当に気持ちが通い合っているからうまれる駆け引きも手が込んでいて、人間関係に疲れているあなたの心の処方箋となってくれるでしょう。

王様の仕立て屋~サルトリア・ナポレターナ~大河原遁

なぜか、地中海に面したナポリの泥棒市で、イタリア人に勝るとも劣らない腕前で自店のサルトを開業する「ナポリ仕立て」の職人・織部悠を主人公に、ややこしい問題を抱えてサルトを訪れる客の身も心も仕立て直すサクセスストーリーです。話の節々にちりばめられているヨーロッパの歴史や文化、ゴシップの説明で国際情勢に詳しくなれるほか、髪形や体形などのコンプレックスをファッションで補うポイントもわかります。
明日から使えるファッションの話をまずは一冊、覗いてみてはいかがでしょう。

クーベルチュール末次由紀

高価なお菓子を買うとしたら、何を求めて買いに行くでしょう。
東京の住宅街の一角で、ミステリアスなイケメン兄弟が運営するショコラティエに訪れる人々のオムニバスストーリー。大きなドラマはありませんが、誤解が解けたり、今まで伝えられなかった気持ちを伝えたりと、打算抜きに人に優しくしたいと思う人の味方として、チョコレートは仕込まれ、用意されています。
なかなか、一人ひとりが心に余裕を持てない時代だからこそ選んで欲しい作品です。

おいしい関係槇村さとる

もし、専業主婦になるかOLになるか、2択を選ばなくてはならないとしたら。どちらの道でもなく「職人」となる選択肢を提示するのがこの作品。
大企業の社長である父親が急死したため、令嬢の百恵は急遽職探しを始めます。その結果、食べることが好きで一流の味覚を持っていることから、シェフに弟子入りし料理人を目指します。
「これだ!」と思えることなら、遅いなんてことはない!そんな希望をくれるお話です。